今月の臨床 血栓症と肺塞栓―予防と対策
血栓症の病態生理
副島 弘文
1
,
小川 久雄
2
1熊本大学保健管理センター
2熊本大学大学院循環器病態学
pp.642-645
発行日 2004年5月10日
Published Date 2004/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100513
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血栓形成の要因
血栓症の発症要因としてはVirchowの3原則(1.血流の異常,2.血管壁の異常,3.血液性状の異常)が古くから知られており,血栓形成部位によりこれら異常の関与の程度が異なっている.正常の血管内皮細胞には抗血栓作用がある.したがって内皮障害,ことに内皮細胞の剥離,脱落があると抗血栓面が失われ血栓形成作用のある内皮下組織が血液と触れることになり,血小板の粘着を初期変化とする血栓形成が始まることになる.血栓は血流の障害されるところにできる傾向があるが,血流の停滞,流れの剥離,渦流,乱流などは血管内皮の損傷を引き起こしうるといわれている.
血液は正常時,比重の重い赤血球が求心性に血流の中心に集まって流れている.一方,比重の軽い白血球や血小板は血管壁に近いところを流れているが,血流が緩やかになると求心作用が弱まり,辺縁の血流の血小板は内皮細胞層に近く分離し,凝集しやすくなる.血流が停止すると,その部の内皮細胞への酸素や栄養の供給が不十分となり,透過性の亢進や内皮細胞の剥離が起こる.
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