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はじめに
Fetal growth restrictionという病態は元来その胎児が持つ発育のポテンシャルが内的あるいは外的要因により抑制された状況にあるものと理解される.臨床的なFGRの背景・病因には,胎児の先天的な異常・遺伝的因子に由来するもの,感染症に,母体合併症や妊娠中毒症,胎盤・臍帯の異常などに起因する何らかの子宮内環境の変化(悪化)に胎児が反応,適応し,発育が抑制されたと推測されるものなどさまざまなものがあるとされる.
FGRは周産期死亡率,罹患率,長期予後などの臨床的上の諸問題から,診断,治療に関してさまざまな研究が行われてきた.また最近では,Barker 1, 2)らにより提唱されたfetal origins of adult disease(FOAD), developmental origins of health and disease(DOHaD)3)と呼ばれる概念,すなわち虚血性心疾患,高血圧や糖・脂質代謝異常などのいわゆるmetabolic syndrome・成人病の発症と出生体重,母体の低栄養,子宮内環境との関連に関する数多くの疫学的データが示されてきたことから,胎児の発育と子宮内環境に関する病態生理学的な背景の解析に関心が高まっている.
これまでFGRに関する臨床,基礎研究の多くは後方視的な視点から行われてきた.すなわち,結果的にlight for date(LFD)であった児をFGRとして検討したものが多い.しかしながら,上述の概念からすれば必ずしもFGR=LFDとは限らないことに留意すべきであり,実際の臨床場面で遭遇する前方視的な観点でのFGRの診断としては問題があると考えられる.
本稿では,FGRの疾患概念をふまえたうえでの超音波計測によるFGRの臨床的診断法と原因の分析に関して概説したい.
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