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はじめに
「健やか親子21」が発表され1),より効果的な母子保健のありようについて議論が重ねられている.妊娠,出産については,「安全性と快適さの確保」が主要な課題であり,「妊娠出産に満足する」女性の割合が2010年には100%になることが取り組み目標の1つとなっている.しかし,「快適な出産」「満足のいくお産」とはどういうことか,国際的にもはっきり定義づけはされていない.
近年では,妊娠・出産にかかわるヘルス・サービスの質を評価する試みとして,出産に対する「満足感」が用いられ,「満足度」といった指標がよく利用されている2~8).しかし,長くお産にかかわっている助産,産科医によると,豊かな出産経験をした女性は,子育てもスムーズであり,自分自身や,子供の体のありようにもより自信を持つようになり,自律的な家族関係への働きかけがみられ,また次の妊娠,出産に対して積極的な態度をとることが多いという9).これは,出産は単に「満足,快適」のみでは測りきれない,心身双方の大きな変革のきっかけになり得ることを示していると思われる.すなわち「満足度」のみではない本質的な身体経験を測定する必要があると考えた.
本研究では,出産経験を女性が心身ともに変革するきっかけになり得るような重要なライフイベントとして捉える.そして,変革につながるような豊かな出産経験をtransforming birth experience(以下,TBEと表記する)とし,実際にどのような出産経験がTBEになり得るのか定義付けをすることを目指す.本研究では,身体に向き合うような出産経験をした女性の手記,ケア提供者との議論などをもとに,TBEを定義する尺度を作成し,その標準化を試みた.
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