今月の臨床 安全な産科手術・処置をめざして
分娩後の手術・処置における安全対策
子宮内反の処置と対応
平野 秀人
1
,
細谷 直子
1
,
清水 大
1
,
熊沢 由起代
1
,
田中 俊誠
1
1秋田大学医学部生殖発達医学講座産婦人科分野
pp.876-879
発行日 2005年6月10日
Published Date 2005/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100350
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
子宮内反症とは
胎盤娩出時に,子宮が反転し子宮内膜面が腟内や腟外に露出する状態をいう.内反の程度によって子宮嵌凹,不完全子宮内反症,完全内反症に分類される.顕著な症状を呈さないこともあるが,腹膜刺激による強烈な疼痛や迷走神経反射に起因する血圧の下降,さらに胎盤剥離面からの大出血による出血性ショックなど,生命の危険性に及ぶことがあり,早急に適切な対応を要する代表的な産科救急疾患の1つである.
子宮内反症の診断
適切な対応のためには,まず子宮内反症を迅速に診断することから始まる.そのためには子宮内反症という疾患を認識している必要がある.本疾患の発生頻度は必ずしも高くないので経験する機会が少なく,初めて遭遇した場合,必ずしも診断が容易でないことがある.完全内反症の場合は,胎盤娩出と同時に,見慣れない大きな赤黒い肉塊が一緒に現れる.助産師が「何かおかしいものが出ています」と指したら,それは子宮内面で,まさに完全子宮内反症が発症した瞬間である.不完全子宮内反症の場合は,腟鏡による産道検査の際に一見,筋腫分娩かと見間違う可能性がある.筋腫分娩とは異なり,腫瘤の全周に頸管を認めないことから本疾患と診断する.子宮嵌凹の場合は胎盤娩出直後,触診で子宮底が漏斗状に凹んでいる,あるいは触知しにくい場合に本疾患を疑う.経腹的超音波検査で子宮底部の嵌凹を認めることにより診断が確定する.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.