講座
浮腫について
吉利 和
1
1東大田坂内科教室
pp.14-18
発行日 1953年11月1日
Published Date 1953/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200474
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1.浮腫とはどんなものか
浮腫(むくみ)については医師ばかりでなく,素人の方もある程度の知識をもつている.浮腫があるとまず腎臓病や心臓病を考えることになる.しかし,では浮腫とは何であるかということになると,未解決の問題が沢山ある.では浮腫とは一体どんなものであろうか.この点についてまずのべてみたい.
浮腫があるということを知るのには,何もしないで,ただ眼で見ただけでむくんだような顔や足というものでわかることもある.そしてこの感じもなかなか正確なことが多い.しかし,ごく軽い浮腫のときには,どうしてもそれだけでは分りにくい.その時には,通常は指で圧を加えることになる.一番多く用いられるのは,脛骨稜の前面で,中1/3と下1/3の中間であつて,ここを拇指で圧迫するのである.健康な人でも,強く圧迫すれば,幾分かは凹むが,指をはなせば,速かにもとにもどつてあとに凹み(圧窩)を残さないのが普通である.ところが,浮腫のある時には,指圧を加えた時に,凹み方も大きいし,また指圧を除いた時にも,あとまで圧窩が残つていることが特徴である.浮腫というのは,元来こうした指圧を加えた時に圧窩が残るということなのである.
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