連載 Dos&Don'ts婦人科当直の救急診療ガイド・10
―性器出血を伴わないもの―卵巣腫瘍の茎捻転
橘 敏之
1
,
山村 省吾
1
,
貴志 洋平
1
1市立長浜病院産婦人科
pp.352-355
発行日 2005年3月10日
Published Date 2005/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100204
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1 はじめに
卵巣腫瘍の茎捻転は婦人科急性腹症の代表的な疾患であり,その痛みの強さや発症が突発的であるという点で際立つ存在である.
過去の報告によると,卵巣腫瘍の茎捻転は卵巣腫瘍の10~20%に合併するといわれ,予想外に多い疾患である1, 2).また,茎捻転と診断されていない卵巣腫瘍症例の開腹時に軽度の捻転を認めることも多いことから,症状を伴わない茎捻転は有症状例の数倍存在する可能性がある.
一方,卵巣腫瘍自体はsilent diseaseであることが多く,産婦人科受診歴のない若年女性に茎捻転が多いことから,茎捻転発症を機に卵巣腫瘍が指摘されることも多い.そのため,卵巣腫瘍自体の精査が十分でない時点での治療開始が不可避となる点も茎捻転の特徴である.
茎捻転の発症機転については,急激な姿勢変化や外力などが原因となるなどの説や,腫瘍が増大する過程で捻転するという説があるが,確立された説はないようである.
茎捻転を生じる卵巣腫瘍の種類に関しては,良性腫瘍,特に皮様嚢腫が多い.皮様嚢腫に捻転が多い理由の1つとしては,この腫瘍が膀胱子宮窩に発育することが多いために可動性が上がることが考えられる.一方,チョコレート嚢腫や卵巣癌では茎捻転は稀であるが,これは周囲組織と早期に癒着することにより捻転が抑制されるためと考えられる.
茎捻転を生じる卵巣腫瘍のサイズは5~15 cmのものが多く3, 4),長径20 cmを超えるようなものは稀である.
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