今月の臨床 女性診療科外来プラクティス
VI 更年期・老年期外来
4. 女性内科的疾患 5) 更年期と肥満や体脂肪分布異常
堂地 勉
1
,
簗詰 友美
1
1鹿児島大学医学部産婦人科
pp.600-603
発行日 2006年4月10日
Published Date 2006/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100105
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1 はじめに
肥満が高血圧症,糖尿病,高脂血症,動脈硬化症などの内分泌・代謝異常や生活習慣病を伴いやすいことはよく知られている.しかし,肥満の程度とこれらの異常の発生頻度や重症度は必ずしも相関しない.肥満が体脂肪組織の過剰な蓄積であると定義すれば,その蓄積量の多寡(肥満度)よりも蓄積部位の異常(体脂肪分布の異常)がさまざまの内分泌・代謝異常と関連して重要であることが明らかになりつつある.上半身型体脂肪分布は内臓(腸間膜や大網)に脂肪が過剰に蓄積し,下半身型体脂肪分布に比較して月経異常,高脂血症,糖尿病および高血圧症が多い1, 2).上半身型体脂肪分布と関連する高脂血症,高血圧症および糖尿病などの内分泌・代謝異常は,インスリン抵抗性(インスリンに対する感受性の低下)を共通の基盤として病因論的に密接に関連する疾患として認識されるようになっている.体脂肪分布異常と肥満は類似するが,厳密には異なる.欧米では肥満をgeneralized obesity(あるいはoverall adiposity),体脂肪分布異常をabnormal body fat distributionとして明確に区別している.
中年太りという言葉があるように,更年期(中高年)は,思春期や産褥期と並んで女性が肥満になりやすい時期である.これらの時期はいずれも内分泌環境が大きく変化する時期である.しかし,肥満の成因には内分泌環境の変化だけではなくストレスも関与する.ここでは,更年期と肥満や体脂肪分布異常について概説する.
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