今月の臨床 PCOS─新たな視点
PCOSの長期予後─新たな問題点
2.PCOSと肥満(体脂肪分布異常)
堂地 勉
1
1鹿児島大学医学部産婦人科学教室
pp.1191-1195
発行日 2006年9月10日
Published Date 2006/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101277
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
肥満が高血圧症,糖尿病,高脂血症,動脈硬化症などの内分泌・代謝異常を伴いやすいことはよく知られている.しかし,肥満の程度とこれらの異常の発生頻度や重症度は必ずしも相関しない.肥満が体脂肪組織の過剰な蓄積であると定義すれば,その蓄積の絶対量(肥満度)よりも,蓄積部位の異常(体脂肪分布の異常)がさまざまな内分泌・代謝異常と関連して重要であることが明らかになりつつある.肥満と体脂肪分布異常は類似するが,厳密には異なる.欧米では体脂肪分布をbody fat distributionと呼び,肥満とは明確に区別している.さらに近年では,上半身型体脂肪分布(内臓脂肪型体脂肪分布)に高脂血症,高血圧症,耐糖能異常などを伴う内分泌代謝異常はmetabolic syndrome(内臓脂肪症候群)と呼ばれるようになった.
肥満と関連する婦人科疾患には多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)がある.しかし,PCOSは肥満よりも上半身型体脂肪分布が特徴的である1).PCOSの治療上の問題点には,(1)クロミフェンに抵抗を示す,(2)ゴナドトロピン(Gn)療法で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりやすい,(3)Gn療法により多胎妊娠が発生しやすい,などがある.これらの問題点は,排卵誘発法の工夫や凍結胚移植などの導入により解決されようとしている.ここでは,PCOSのもう1つの問題点である,(4)「PCOSは長期的には生活習慣病に進展しやすい」ということについて,体脂肪分布異常と関連させて概説する.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.