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はじめに
脂肪細胞は単なる脂肪貯蔵器官ではなく,アディポサイトカインと呼ばれる各種の生物活性物質を産生する生体内最大の内分泌器官であることがわかってきた1).アディポサイトカインにはレプチン,tumor necrosis factor(TNF)─a,interleukin(IL)─6,plasminogen activator inhibitor(PAI)─1などが知られているが,卵胞液中のこれらのアディポサイトカインと体外受精(IVF)の成績についてはいくつかの報告がある.例えば,卵胞液中のレプチン2),TNF─a 3),IL─6 4)の上昇はIVF成績を低下させ,刺激周期では卵胞液中のPAI─15)が上昇することなどが報告されている.特にレプチンは,子宮,卵巣莢膜細胞や顆粒膜細胞6)のみならず成熟卵細胞7)および着床前の受精卵8)にもmRNAあるいは受容体が発現しており,着床や胚の初期発生への関与が推定されている.
最近では,新たなアディポサイトカインとしてアディポネクチン(ADPN)が注目を浴びている.ADPNは244アミノ酸からなる分泌蛋白であり,66アミノ酸でコラーゲン様モチーフを持ち,補体系のC1qやコラーゲンX,VIIとホモロジーを有している9).また,ADPNはインスリン感受性改善作用や,各種接着因子,増殖因子などの抑制を介して,血管内皮機能と深く関与していることが報告されている10).
レプチンはインスリン抵抗性を増強し,ADPNは減弱させるという点で相反する作用を有しているが,ADPNの生殖系に関する報告はほとんどない.そこで,卵胞液中ADPN値の推移とIVFの成績との関係を比較検討した.
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