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はじめに
ホモシステイン(homocysteine : Hcy)は,食事中に含まれる必須アミノ酸の1つであるメチオニンの中間代謝産物で,主に肝臓で生合成される.その後,ビタミンB6を補酵素としてシステインとなって尿中に排泄される.Hcy代謝の先天的な異常により起こる先天性ホモシスチン尿症は,Hcyの酸化型であるホモシスチンが蓄積し,若年性の動脈硬化性血管障害を起こすことで知られている1).しかし,先天性酵素異常のない一般住民においても血中のHcy濃度の軽度から中等度の上昇が心血管系疾患の危険因子になることが報告されている2).また,Hcyは血管内皮に対し多彩な作用を示す.HcyはNOによる内皮弛緩作用の抑制3)や第・因子活性の上昇,さらにトロンボモジュリンの発現低下による活性化プロテインC産生低下などの作用などである4).このような作用によってHcyは内皮細胞の血栓傾向を増大させ,内皮傷害を起こし,血栓塞栓症や動脈硬化症発症を誘発することがある5).
妊娠婦人の場合,軽度のHcy血症は,遺伝的要因のほか,葉酸などのビタミン摂取不足に起因し,血中Hcy値の上昇は静脈血栓症6),常位胎盤早期剥離や胎盤梗塞7),死産8),反復流産9),妊娠高血圧症候群10)のリスクが高まることが報告されている.最近では血中濃度と卵胞液(follicular fluid : FF)中濃度が有意に相関することが指摘され11),in vitroにおいては,マウスの神経板形成期胚に対して発育抑制や異常発生などのembryotoxicityがあることがわかってきた12).さらに,FF中のHcy値が低いほど,conventional in vitro fertilization─embryo transfer(体外受精胚移植 : c─IVF)の成績がよいことをわれわれはすでに報告した13).また,葉酸やビタミンB12の服用は血中のHcy値を有意に低下させる14).そこで,葉酸の服用がFF中のHcy値とc─IVFの成績にいかなる影響を及ぼすかを検討した.
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