論述
手指における新鮮開放創処置の検討
南条 文昭
1
Bunshô NANJÔ
1
1東京大学医学部附属病院分院整形外科
pp.33-42
発行日 1969年1月25日
Published Date 1969/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908467
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手指はきわめて合目的な器官であり,繊細かつ複雑な構造を持つ反面,日常きわめて外傷を受けやすい部位でもある.したがつて一見些細と思われる外傷によつても,手指の受ける機能的損失の意外に大きな場合もあり,手指のもつ構造的・機能的特殊性を十分に把握した上で,初期治療の段階からこれを確実に処置しておかないと,後刻,いかように努力しても,その損失に報いることができない.およそいかなる創においても,初期治療の段階で一次的に治癒せしめることができれば理想的ではあるが,損傷機転が複雑な場合も多く,かつ障害を受ける組織が多様に亘つたり,その程度も多岐に亘ることと,創部汚染が必発することから,創自体,一時的治癒を図れる条件にないし,ましてや救急処置の場という限界では,損傷された手指を適確に処置することは容易なことではなく,結局は汚染創対策に追われ,支持組織や被覆面の簡単な補繕だけで,損失機能の再建は後刻の二次的手段にゆだねなければならぬことが多い.この辺の事情に創処置にまつわる幾多の問題点が提起される所以があろうかと考えられる.
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