高度の骨盤輪不安定を呈したPost-pregnancy osteoporosisの1症例

A Case of Post-Pregnancy Osteoporosis with Severe Pelvic Ring Instability

　抄録：症例，26歳，女，外傷歴は無いが，妊娠9ヵ月頃より腰痛，左腸骨後上面部の突出，右下肢のシビレ感が出現．1993年12月22日帝切分娩後，右下垂足出現で入院した．X線所見にて，左仙骨外側部の骨破壊と仙腸関節の離開，腰椎横突起骨折，腸腰筋陰影の拡大および骨化像，左恥骨上枝骨折，その他右𦙾骨骨幹端部，大腿骨骨幹部に骨改変，右第5中足骨皮質増生，両第5指中節骨の短縮像を認める．血中，尿中のCaとPは正常，Al-p，LDHは上昇，PTHはやや低値，Ellsworth-Howard試験で，尿中PとCyclic-AMP反応はともに陽性．約3ヵ月後，右下垂足は改善し，仙腸関節部に旺盛な骨化像が出現して歩行は安定したが，その後も左腸骨部の突出は不変である．

　本症例は，素因によるpost-pregnancy osteoporosisがあり，周産末期に児頭などの負荷ストレスで恥骨骨折を生じ，骨盤輪不安定と靱帯弛緩性により，仙腸関節部離開，仙骨および横突起骨折へ進展したことを推定した．