Japanese
English
境界領域
慢性腰痛の心理社会的側面
Psychosomatic Aspects of Chronic Low Back Pain
山内 祐一
1
,
稲瀬 正彦
1
,
蝦名 享子
1
,
志賀 令明
2
,
山本 光璋
3
Yuichi YAMAUCHI
1
1東北労災病院心療内科
2山形女子短期大学
3東北大学医学部脳疾患研究施設神経生理
1Department of Psychosomatics and Psychiatry, Tohoku Rosai Hospital
キーワード:
慢性腰痛
,
chronic low back pain
,
痛覚閾値
,
pain threshold
,
災害神経症
,
accident neurosis
,
仮面うつ病
,
masked depression
,
心因性疼痛
,
psychogenic pain
Keyword:
慢性腰痛
,
chronic low back pain
,
痛覚閾値
,
pain threshold
,
災害神経症
,
accident neurosis
,
仮面うつ病
,
masked depression
,
心因性疼痛
,
psychogenic pain
pp.1175-1182
発行日 1983年11月25日
Published Date 1983/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906852
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はじめに
整形外科領域において,腰痛は最も頻度の高い疾患のひとつである1).そのうち,急性腰痛は身体的処置により大半は治癒せしめうるとしても,慢性腰痛の場合往々にして病態は膠着状態に陥り,中にはポリサージェリーに追いこまれ悲惨な転帰をとる例さえみられる2).腰痛に限らず,一般に痛みの認知には神経生理学的要素と同時に,多かれ少なかれ心理的要因が含まれる3).そのため,疼痛患者には必ず心身医学的アプローチが必要である4).とくに,慢性腰痛ではたとえ何らかの器質的病変があっても,それと患者の愁訴とがすぐ直結するとは限らない5).筆者らの経験では,痛みに対する反応は個人毎に異なり,患者の病前性格,家庭環境,価値観および知的水準などの因子がむしろ重要な意味をもつように思われる.このことは補償神経症でとくに問題となりやすい6,7).労災事故や交通事故には補償問題がつきものとなった昨今であるが,これが未解決のままであると痛みが遷延しやすいもので,目常臨床上誰もが経験済みであろう.この領域の系統的な研究はまだ不十分であるため治療法も確立しておらず,心療内科でも大きな課題のひとつになっている.そこで,本稿では慢性腰痛患者がかかえる様々の心理社会的問題点を指摘し,心身医学的診断ならびに治療の現況と将来などに触れてみることにしたい.
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