症例検討会 骨・軟部腫瘍11例
症例8—左鎖骨腫瘍
千木良 正機
1
,
矢端 信義
1
,
宇田川 英一
1
,
坂田 則行
2
,
町並 陸生
2
1群馬大学整形外科学
2群馬大学病理学第2
pp.281-283
発行日 1983年3月25日
Published Date 1983/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906705
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例は10歳男性.昭和56年2月に左鎖骨部を打撲し疼痛および腫脹が出現した.マッサージ等を受けていたが悪化傾向を認めたため近医を受診し,数回の穿刺にて血液が採取されたため当科を紹介された.初診時臨床所見では左鎖骨部に5.0×7.5cmの腫瘤を触れ,皮膚はわずかに茶色味を帯び,静脈怒張もみられた.硬度は弾性軟で鎖骨との可動性は認められなかった.又表面は比較的平滑で周囲との境界も明白であり波動様の抵抗を触れた.左鎖骨上窩は触知不能であるがリンパ節腫大は認めない.血沈値の亢進,CRP陽性およびAl-Pの軽度亢進が認められた.単純X線にて鎖骨骨折と著明な仮骨形成を証明し,病的骨折又は穿刺による骨髄炎を疑った.入院安静および抗生物質投与によって症状の軽快がみられないため4月13日に試験切除を行い,左鎖骨原発と思われる灰白色充実性で比較的軟らかな腫瘍を確認した.腫瘍割面は灰白色で所々に毛細血管と思われる赤色点が混在しており,軟らかく細胞に富んでいると考えられた.その後行った67Gaスキャンでは病巣部への取り込みはあるものの他部位への集積は確認できなかった.以後Adriamycinを中心とした化学療法および放射線療法を行ったが,皮下転移結節の形成および肺転移形成を認め10月7日に死亡した.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.