整形外科を育てた人達 第1回
Ambroise Paré(1510-1590)
天児 民和
1
1九州大学
pp.64-67
発行日 1983年1月25日
Published Date 1983/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906668
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はじめに
整形外科学を今日の状態にまで育ててきた人は決して少なくない.又,整形外科と言う言葉は,Nicolas Andry(1658-1742)が1741年に「L' Orthopedia」を著した時に始まるのであるが,それまでは今日で言う整形外科治療を全く行っていなかったのではない.むしろ昔の外科は主として四肢の外傷・疾患を取扱ってきたのである.換言すると,整形外科医療はAndry以前からあったと考えるべきである.此処で思い出すのは次の話である.大正10年頃,東大の田代義徳教授が九大の住田正雄教授に,日本整形外科学会を結成したいと相談に来られたが,その時住田教授は,外科は昔から主として四肢の外傷,疾患を取扱ってきたが,最近の外科は内臓外科に重点が移ったので四肢の外科を軽視する傾向もあるため我我こそ外科の伝統を守り,外科学会の指導力を強めるべきで新しい学会の必要はない,むしろ内臓外科の研究者が内臓外科学会を結成して外科学会から出て行くべきと言われ,田代教授の提案を拒否せられたと聞いている.
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