境界領域
軟骨形成の分子生物学
鈴木 旺
1
Sakaru SUZUKI
1
1名古屋大学理学部化学教室
pp.847-852
発行日 1978年9月25日
Published Date 1978/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905769
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緒言
医化学あるいは生化学の名のもとに呼ばれる領域は伝統ある学問でありあえて説明を要しないが,分子生物学というとその学問的性格は必ずしもはつきりしていない.筆者の所属する学部には大学院専攻の分子生物学研究施設(5部門)があり,多くの学生や研究者が所属しているが,その実体が生化学や生物物理学とどう違うか必ずしもはつきりしていないし,またそんなことを詮索するほど暇な人もいない,医化学や生化学という看板をかかげると化学の色彩が強くなりすぎるので,それにとらわれず(いいかえると,物理学や生物学の色彩を強くして)生命現象を分子レベルで研究するための施設だという人もいる.もつと皮肉の好きな人は,生化学と分子生物学の違いは後者は前者ほど高度(?)の化学知識や化学実験技術を必要としない点だけであるなどという.何といわれようと分子生物学における中心プロジェクトの一つ-遺伝情報の解読-は今世紀最大とまでいわれる輝かしい成果をおさめてきたことは事実である.それは,ひと言でいうと核酸の4種の塩基が三つずつ組になつて異なる20種のアミノ酸の並び方,つまりタンパク質の構造を決めるということであり,なるほど初歩的な化学知識で十分理解できる.
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