臨床経験
母指内転拘縮におけるキルシュナー鋼線の利用
前田 敬三
1
,
三浦 隆行
1
,
木野 義武
1
,
中村 蓼吾
2
Keizo MAEDA
1
1名古屋第一赤十字病院整形外科
2名古屋大学分院整形外科
pp.693-698
発行日 1974年8月25日
Published Date 1974/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905036
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
手に占める母指の重要性は周知のごとくであり,欠損した場合には造母指ないしは母指化術の適応となることが多い.しかし,母指が存在してもその機能を失つたものは無きに等しいか,かえつて障害とさえなることがあり機能の再建が必要となる.
母指は,他の指と同様に知覚と伸展,屈曲の動きが正常であることのほかに物を把持する役目上他指と対立位になることが要求される,母指対立筋,短母指外転筋,短母指屈筋などが正常であつても,これらの動きを阻害する因子が存在すれば対立位をとることは不可能となるが,母指の内転拘縮はその現われの1つである.Littler3)をはじめとして多くの人達6,8,9,11)が母指内転拘縮の発生原因を分類,列挙しているが,拘縮の主因をあげれば,田島らの述べたように皮膚性,深筋膜性,筋性,CM関節の関節包性,靭帯性および骨性の拘縮などに大別される.皮膚性拘縮に対してはZ形成のほか,遊離植皮,有茎植皮,sliding flap法7)などの植皮により,深筋膜性の場合はこれの縦切により,筋,関節包,靱帯に起因する時は母指内転筋,第1背側骨間筋などの切離,移行,関節包切開,大菱形骨摘出などが行われている.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.