視座
正しい手術を
河邨 文一郎
1
1札幌医科大学整形外科学教室
pp.295
発行日 1974年4月25日
Published Date 1974/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904973
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先日,"臨床整形外科"の座談会(第9巻第6号掲載予定)に出席した.テーマは先天股脱に対する骨盤骨切り術だつたが,その討議のなかで,Chiari法や私の変法などで臼蓋をつくるとき,骨頭をふくめて下方折片をどのくらい内側方へ押しこむべきかが話題になつた.もちろん新臼蓋が骨頭を十分に蔽うようになるまで,上方折片を外側方へ開き,同時に下方折片を押しこむべきだと答えたが,これはこの種の骨盤骨切り術が臼蓋形成術の一種である以上は当然のことである.小骨盤がそのためかなり狭くなつたところで心配はいらない.術後,時日がたつにつれて小骨盤の再拡大が自然に起こつてくるからである.要は一気に強固な臼蓋をつくればよいということだ.
ところが,骨盤の狭小化をおそれるあまり,この手術にSpitzy式に骨片を移植して臼蓋をつけ加える方法を日整総会で発表したひとがあつた.これでは骨盤骨切り術とはいえないのである.どのような手術の場合でも,その方法の日的を正しく理解し,その手技を正しく行なうのでなければ意味がない.ましてや,正しくない手技を用いてその手術法の価値そのものを論議するとしたら,これは困つたものとしかいいようがないであろう.
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