境界領域
コラーゲンの架橋と整形外科的疾患
林 泰史
1
,
五十嵐 三都男
1
,
松浦 美喜雄
2
,
吉野 槇一
3
Yasufumi HAYASHI
1
1東京都養育院付属病院整形外科
2東京都老人総合研究所臨床生化学
3東京都立大塚病院リウマチ科
pp.223-230
発行日 1974年3月25日
Published Date 1974/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904966
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はじめに
骨,軟骨,腱,皮膚など整形外科で扱う臓器の主成分はコラーゲン線維であることはよく知られているが,コラーゲンの構造の変化が臓器に与える影響については知られないことが多い.それはコラーゲンという蛋白は活動性が低く,ただ体を支持しているのみと考えられていたため,興味が少く,研究の遅れた分野となつていた.しかし最近コラーゲンの構造,機能に関する研究が急速にすすみ,殊に加齢や疾患に重要な意味を持つと考えられている架橋構造についての研究が盛んとなり分子レベルでの変化がつかめるようになつてきた.
コラーゲンの構造と整形外科的疾患の関係は深い.たとえば小児の骨折で骨が屈曲する生木骨折がみられるが,成人,老人ではそれがみられない.その原囚は骨無機質の質や量の変化とともに骨コラーゲンの変化に起因することは容易に想像される.しかし骨の無機質の研究に比べ,有機質,特にコラーゲンの研究が非常に遅れているために,老人の骨に対してカルシウム投与をしようという努力はされているが,骨コラーゲンを変化させようという治療は少い.本文で述べるコラーゲンの研究,特に架橋に関する研究はこれらの問題解決の緒である.リウマチなどにみられる病的腱断裂を始め,外傷性腱裂(アキレス腱断裂をも含む)においても腱コラーゲンの構造上の変化が基礎状態として存在していることも考慮せねばならないだろう.
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