視座
人工関節について思うこと
諸富 武文
1
1京都府立医科大学整形外科学教室
pp.9
発行日 1974年1月25日
Published Date 1974/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904933
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関節が何らかの原因,例えば種々の種類の炎症あるいは外傷によって解剖学的,機能的に荒廃した場合,さらには腫瘍の進展による関節障害の存在または,招来されるであろう生命の危険と障害が予想される場合には,これらの関節に対して如何に対処するかはわれわれにとつて大問題である.関節機構の荒廃の場合には関節の三大特性である支持性,運動性,無痛性のほとんどが同時に冒されていることが多い.この場合,運動性を犠牲にして固定術を施行することにより,他の二大特性を最大限に発揮させるのも重要な対応策であり,これにより患者も満足している例も多い.一方患者も医師も関節の特性をすべて満足させられる手術法があれば何らかの関節形成術を望むしまた当然の欲求である.そこで先人の創意工夫によつて固定術に対して関節形成術の種々の術式が考案されてきた.
我邦においても,J. K.膜,OMS膜の考案により幾多の成功例が挙げられている.しかし一方これのみに頼られない場合もあり,1938年Smith-Petersonのcup arthroplastyが開発されたが,まだ満足すべき成績が得られず,ついでMooreらは1943年人工骨頭を始めて用い,骨頭置換に成功している,この場合それに使用する金属の選択が重要である.一方1946年Judet兄弟のacrylic prosthesisも開発され,実用に供され我邦でも片山教授,橋倉らの報告があるが,今や金属によるものが圧倒的に使用されている.
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