視座
両前腕切断に対するKrukenberg形成術
佐藤 孝三
1
1日本大学医学部整形外科学教室
pp.99
発行日 1973年2月25日
Published Date 1973/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904799
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30歳を少し越した公務員のTさんは,事故で左手首から切断され,将来が真暗になつたと感じていた.私は先日都内の某病院でTさんにあつたのだが,彼は創の痛みよりも心の悩みに耐えかねて,周囲の者の慰めの言葉に全く耳をかさぬ様子であつた.
私はムンテラのために,私の古い患者I君にTさんとあつてもらうことにした.I君は戦争で両前腕切断,左眼失明という悲運にあい,終戦直後に私がその右前腕にKrukenberg形成手術を行つて,橈骨と尺骨との間で物がはさめるようにしたのである.爾来27星霜,I君はさまざまの困難をのりこえて,現在はさる会社の外交員としてはたらき,一家の生活を支えている.
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