筋組織病理図譜・12【最終回】
脊髄灰白髄炎(Poliomyelitis)
桜井 実
1
1東北大整形外科
pp.992
発行日 1972年12月25日
Published Date 1972/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904776
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近年はワクチンの投与により新しい発生は少ないかと思われるが10歳代以上の年齢層にはポリオの後遺症による運動障害や骨格の変形を愁訴とする患者が残つている.症例は19歳の男子で3歳頃の罹患後放置されていたが麻痺性側彎症に対し後方脊椎固定術を受け,また一側の尖足に対し矯正保持装具の処方を受けた.手術の際背筋の一部を調べて見ると第1図のごとく間質に線維化があり,その周辺には中心核を持つ線維が見られる.この部分のコハク酸脱水素酵素(SDH)の活性が不規則に低下している(第2図).
他方筋力「G」を示す前脛骨筋においては第3図に見られるように萎縮した線細は細胞群と思われる位著しく細くなり,太い筋線維の間に挾み込まれている.この図に見られる太い線維は直径がおよそ200μに及び所々に中心核を有する.これは代償的な筋作動が長期間続いたために肥大したものと思われ,第4図に示したSDH染色による内部構造の検索では正常筋と違いがない.従つて機能不全の筋で見られる中心核とは出現機序が異るものと考えられる.
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