筋組織病理図譜・11
Myotonic dystrophy
桜井 実
1
,
黒沢 大陸
1
1東北大整形外科
pp.918
発行日 1972年11月25日
Published Date 1972/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904765
- 有料閲覧
- 文献概要
筋の機能は収縮能力だけではなく随意的に弛緩させることができなければ,運動を司るのに十分とはいえない.握つた拳を円滑に開けないのを拮抗筋である伸筋群の筋力低下のためと判断してmyotonicな状態を見落す恐れがある.第1図は24歳の男子で家族的に発症し,握手したきり仲々手放せない程症状が著明であつた症例で,標本は前腕の屈筋群の一部である.軽度の直径の大小不同,筋鞘核の中心へ移動する傾向が見られる.このようにH-Eでは余り変化が目立たないが,第2図のコハク酸脱水素酵素(SDH)染色で筋線維内のミトコンドリアの偏在が認められる.次は48歳の女性で起立困難など全身筋力低下の愁訴が主体であつたが手指の運動の緩慢なことも気付かれていた.前脛骨筋の生検により第3図に示すようなはなはだしい核の増加,中心核,所によるリンパ球浸潤,貪食細胞が発見された.血清CPKの軽度上昇の他,EMG上針の刺入時の持続的電位発射,白内障などの所見があり,病歴を調べると以前はもつと筋の緊張が強く,家族的に類似の症状を示す者がいることから,myotonic dystophyと診断され,しかもその進行した状態と考えられる.第4図はSDHで,著しい筋線維内の崩壊を表現している.このような内部構造の変化により筋の収縮のみでなく弛緩も障害されるものと想像される.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.