論述
手の新鮮外傷に対する1次再建術(Primary Reconstruction)
諸橋 政樻
1
Masaki MOROHASHI
1
1鶴岡市立荘内病院整形外科
pp.496-504
発行日 1970年7月25日
Published Date 1970/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904422
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いとぐち
手の重度損傷初期治療に際して,治療手技に関する問題は,いろいろな角度から検討され,いまなお古くかつ新しい分野として議論が絶えない.それはすでに何度も強調されているように初期治療のやりかたいかんによつてその手の将来が決るといわれても過言でないからである.一方これらの問題の底を支え,かつ出発点となっているのは「手の外科」的観点に基づいた,損傷手に対する評価の仕方と即戦即決を迫られる治療方針のたてかたであろう.
われわれは〔外傷→(深部組織温存)→創閉鎖→2次的再建手術〕という公式を教えられ,これにしたがつて治療方針をたてて処置を行なつてきた.そして一般には創が複雑であればあるほどできるだけ深部組織に手をつけずにまず皮膚(創)の閉鎖を,という原則が守られ努力されてきた.実際そのとおりなのであるが,しかしここで大切なのは創の形や損傷組織が多種多様で複雑だということと,創の汚染度や組織の生活力喪失度が大きいということとは問題が別だということである,もちろんお互いに深い関係はあろうが,この点をはつきり認識したうえで治療してゆき,創閉鎖ということにある程度安定した成績を得られるようになると,つぎは複雑な創になるほど場合によつては創閉鎖に先だつて深部組織の修復を行なつてもよい,行なつた方がよい,ときには初期治療の際だけしか行なえないものがあるのではないかという考えかたも必要ではないかと思われてきた.
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