境界領域
有茎植皮について—皮弁内循環の問題点
藤野 豊美
1
1慶応義塾大学医学部形成外科学教室
pp.165-173
発行日 1967年2月25日
Published Date 1967/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904193
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はじめに
有茎植皮の歴史は古い.古代インドでは罪人の処罪に鼻の切断を行なつたが,その再建術を皮弁によつて施行した,いわゆるインド法がすでに紀元前800年にSusrutaによつて記録されている.その後ローマ時代にCelsusの前進皮弁Advancement flapの記述などが交献に散見されるが,皮弁が皮膚移植術の一つとして脚光をあびて来たのは,Filatov(1917年)とGillies(1918年)とによる管状皮弁の開発以来のことである.皮弁による移植術はその後第二次大戦まで主に欧州各国で発達をとげた.それは,ドイツ医学の流れを汲む日本においても整形外科や形成外科従事するものだけでなく,再建術を行なうものにとつても熟知すべき基本的手技の一つとなつた.
皮弁を再建術に応用するに際して,最も重要な点は皮弁が正常な生理状態を保つたまま生着することである.その条件について従来多くの報告もあり,種々議論されているが,その成否は皮弁内循環の如何にかかつている.そこで本文ではこの循環の二,三の問題点について考察してみたいと思う.
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