海外だより
股関節外科の現況—アメリカ整形外科学会の股関節コースをきいて
加藤 文雄
1,2
1ハーバード大学整形外科
2東京大学整形外科
pp.546-548
発行日 1969年7月25日
Published Date 1969/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904099
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杖の老人が目につく国
太平洋をこえてはじめてサンフランシスコの街についたとき,杖にすがつて跛行する老人の姿がなんと多いことだろうと思つた.この国では老人でも自分で買物にでかけなければ生きてゆけないし,そのため便利のよい都心部にたくさんあつまつて(というよりは郊外へ逃げていつた肉親からとりのこされて)住んでいるから,よけい老人の姿が街にめだつのであろう.当然のことながら大腿骨頚部骨折とその合併症が頻発するし,一次性股関節症が日本よりずつと多くみられるから,老人の跛行が街頭での印象的な光景になるのも不思議ではない.
股関節の外科がどの整形外科医にとつてももつとも重要なレパートリーのひとつであることはいうまでもないが,その内容が日本とアメリカでかなり違つているのは興味ぶかいことに思われる.たとえば,股関節症にたいしてもつとも多くおこなわれる手術は,アメリカではcup arthroplastyであるのに日本では骨切り術であろう.これは日本には先天股脱にもとづく二次性股関節症が多いことがひとつの要因だと思うが,そのほかにも技術的あるいは社会的な背景が影響をおよぼしているようだ.このような関心をもつてアメリカの股関節外科の現状を展望してみたいと思つていたところ,折よく4月にケンブリッジでAAOS主催の股関節コースがひらかれたので,その感想を中心にして簡単な報告をこころみたい.
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