学会印象記
アメリカ整形外科学会印象記
加藤 文雄
1,2
1Harvard大学整形外科
2東京大学整形外科
pp.291-293
発行日 1969年4月25日
Published Date 1969/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904062
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時代を先取りして自己変革を
われわれは危機の時代に生きている,という言葉でHerndon会長の演説は始まつた.もちろん時と所によつて危機の意味はさまざまである.アメリカ整形外科学会にとつて危機とは何を意味するのだろうか.それはつきつめていえばアメリカの医療制度が社会の変化に対応できず時代おくれになつてしまつたこと,そのため社会から変化を要求されていることを意味している.社会の変化とは,一方では技術革新であり,他方ではmedicare,medicaidに示される医療の社会化への傾向である.このような背景が現象的には医師不足・医療不足という形であらわれ,よりよい質と量の医師を速かに供給するにはどうすべきかという課題として論じられている.Herndon演説は整形外科学会としても全国的な規模でこの課題ととりくまなければならないと訴えるものだつた.二人の招待演説者(一人は医療行政官,他は経済学者)もひとしくこのテーマを論じ,時代を先取りする医師側の自己変革の必要を説いた.Herndon会長の属するWestern Reserve大学が医学教育革新の本拠であるだけに,これら3演説の内容は説得力をもつことができた.しかし豊かで満ち足りたアメリカの整形外科医たちにとつて,これらの警告のことばがどれほど心に響いたことであろうか.
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