巻頭言
第17回日本整形外科学会基礎学術集会を開催するにあたって
原田 征行
1
1青森県立中央病院
pp.904-905
発行日 2002年8月25日
Published Date 2002/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903604
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第17回日本整形外科学会基礎学術集会のテーマは「基礎と臨床の架け橋」としました.整形外科は主に骨を扱う臨床科として認められてきました.基礎的研究については古くから,多くの研究者が結合組織を含む骨の組織,病理,骨代謝などに取り組んできました.しかし本邦では軟部組織である消化管のがんの基礎的研究に比べ,研究態様とその取り組みに遅れがあったことは否めません.骨組織という特異性から,組織標本の作製が簡単にできないこと,骨・軟骨細胞の分子生物学的研究手法の困難さにあったと思います.しかし一方,生体を主体にしたバイオメカニクス,運動機能の解析などには多くの先端的な研究が行われました.20数年前,米国などに比べ,本邦整形外科の基礎的研究は30年遅れているのではないかとの指摘もされました.勿論その研究体制も各大学整形外科教室の研究に依存し,いわゆる臨床家が外国にresearch留学する形で研究が積み重ねられました.先人の努力のかいがあって,近年本邦の整形外科の基礎的研究は,骨・軟骨の研究は勿論のこと結合組織,さらには遺伝子研究,分子生物学などが飛躍的に進展しました.内容も充実し,世界をリードするものも出てきました.研究体制も従来の医学部での基礎医学教室と,臨床医学教室との越えがたい障壁が少なくなり,基礎医学者の目が骨,軟部組織研究にも向けられるようになったことも影響しているものと思います.
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