ついである記・44
Birmingham, Alabama―キング牧師の故郷
山室 隆夫
1
1京都大学
pp.306-307
発行日 2000年3月25日
Published Date 2000/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902941
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●人種差別
繁栄を続ける現在のアメリカ社会において,理由はともかく,現実に存在する大きな社会悪が2つある.それは市民の銃保持と人種差別である.このいずれについても,アメリカでは長い反対運動の歴史があるが,問題解決への道のりは未だなお遠いように思われる.特に後者については,約130年前のリンカーン大統領の奴隷解放宣言以来,幾つかの法律改正が行われ,現在ではアメリカ国民は法的にはすべて平等の権利を与えられているが,実生活においては黒人やヒスパニック,アジア人に対する白人による人種差別や,小民族間相互の差別行為は今も存在している.時には,それがヘイトクライムと呼ばれるネオナチによる白人至上主義や,黒人によるブラック・パワーと呼ばれる過激な運動となって顕在化する場合もある.
一般的に言って,黒人やヒスパニックの占める人口比の大きいアメリカ南部において,昔から人種差別上の問題が多かった.私が初めてアメリカへ留学したのは1962年で,公民権法が施行される以前であった.私はその年にアメリカ南部の町Shreveportへ旅をしたことがある.驚いたことに,その町のホテルのトイレは,当時,白人用と黒人用とに厳然と区別されていた.私は当然のことと思って白人用へ入ったところ,中にいた白人達がびっくりしたような目差しで私を見詰めて近寄ってきた.
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