視座
スポーツ医療の実態を思う
宮永 豊
1
1筑波大学体育科学系スポーツ医学
pp.1425
発行日 1999年12月25日
Published Date 1999/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902856
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我が国のスポーツ医学は質量とも欧米,特にアメリカに対峙できると考えていたところ,いまだにプロ,アマのエリート選手の多くがスポーツ損傷の治療のため,とかく海外に足を向けてしまうのはなぜなのだろうか.ここには,これからのスポーツ医学やスポーツドクターのあり方を考えさせられるものがあるので,私見を述べたいと思う.
まず,医学的知識やアイデアの大部分は残念ながら国外のものであるが,医療技術は欧米と比べて遜色ないと思われる.新しい知識や技術の取り入れ方はどの国にも負けないほど熱心であるからである.このため,提供する外科的治療の質には地域格差がほとんどない.無論,日本の医学教育も見劣りするものではない.さらに,チームドクター制度を初めとしたメディカルサポートシステムは各層,各分野で取り入れられ,大抵のスポーツ損傷は国内で解決できるはずである.それにもかかわらず,国内で治療を受けようとしないのは,いわゆる欧米崇拝があるからではないだろうか.一旦怪我をすると,本人はもとより,エリート選手は大事な商品であるので最善の治療をと関係者も熱望する.カリスマ性のある医師にかかれば,万一うまくいかなくても本人も周囲の人間も不思議にも納得したり,諦めたりする.そのようなメンタリティーがあることは否定できないが,はたして医師側には問題はないのだろうか.
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