ついである記・32
Cancúnとユカタン半島
山室 隆夫
1,2
1京都大学
2国際整形災害外科学会
pp.204-205
発行日 1999年2月25日
Published Date 1999/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902642
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人工膝関節が広く臨床応用されるようになってから既に30年近くになり,わが国でも最近では年間約3万例の人工膝関節置換術が行われている.また,世界全体では年間約37万人の患者に人工膝関節が新しく挿入されているといわれる.現在広く用いられている人工膝関節の機種は,そのほとんどが欧米で開発されたデザインであるので洋式の生活にはあまり不自由がないが,日本人のように正坐や胡坐をする生活では,術後かなりの不自由がある.そこで,京大,玉造厚生年金病院,京セラの共同研究で日本人の生活に合った正坐のできる人工膝関節が開発され,術後約5年間の臨床成績がこのほど漸くまとまった.たまたま,私の友人であるテキサスのJackson教授とメキシコのVazquez-Vela教授とが主催して,メキシコのカンクーン(Cancún)で1998年10月に膝関節の手術に関する国際学会を開くことになって,私に正坐のできる人工膝関節について講演するよう要請してきた.世界の人口の半数以上は床の上に直接坐る生活をしているが,膝の屈曲が最大120°迄しか得られない欧米の人工膝関節を用いると,この人達の生活にはかなりの不自由が生じると思われる.また,ヒンズー教,佛教,イスラム教の信者には礼拝の時に脆くことが求められるので,この人達の使用する人工膝関節には正坐あるいはそれに近い屈曲角度を実現するデザインが望ましい.
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