視座
夢のような話
荻野 利彦
1
1山形大学医学部整形外科学教室
pp.659
発行日 1997年6月25日
Published Date 1997/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902182
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北海道のスポーツ医・科学研究会の先生方が編集した本のなかに現代人の1日という題で,車で出勤して机の前で座って仕事をして,帰ってリモートコントロールを使ってテレビのチャンネルを変える絵がでていた.文明の進歩は人々から運動の機会を奪っており,健康的な生活を送るためには積極的に運動をする必要があることが書かれていた.テレビと言えば私が子供の頃に母が“自分の家に居て映画を観ることができるといいね”と言っていた.その時は夢のような話だと思ったが,まもなくテレビが出現して夢は実現した.離れたところからチャンネルを変えられないかと思った夢も実現した.今になってみれば,私が夢のような話だと思った時には,夢を実現するべく多くの人が開発に携わっていたに違いない.
ひるがえって,私が整形外科を勉強し始めた頃,腕神経叢麻痺の治療は,全根引き抜き損傷であれば肋間神経あるいは副神経の筋皮神経への交差縫合術を行い,その他の場合は麻痺の回復を待って腱移行や関節固定で機能再建を行うのが一般的であった.その後,腕神経叢を展開し,電気生理学的診断法により損傷の程度を明らかにして,神経移植と神経交差縫合を組み合わせた神経機能再建術が広く行われるようになった,陳旧例に対する遊離筋移植と神経交差縫合を組み合わせた方法,手指の運動機能を再建する為の肋間神経の正中神経への交差縫合術や,複数の遊離筋移植と神経交差縫合を組み合わせた方法等が行われている.
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