視座
インフォームド・コンセントと医療紛争
水野 耕作
1
1神戸大学医学部整形外科
pp.229
発行日 1994年3月25日
Published Date 1994/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901310
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インフォームド・コンセントという言葉が日常聞き慣れたことばになっている.医師と患者とのより良い関係と,両者の納得のいく医療を行ううえで大変重要なことである.英語での日常語となったものだから,なにか新しいことをするような,近代的な医療をするような錯覚に陥る.患者に正しく説明をし,納得を得たうえで医療を行うことは,今更いわれるまでもなく,昔から医師として当然行っている行為である.これが新聞などのマスコミなどに取り上げられ,一般世間にもこの言葉が知られるようになったにすぎない.そこで「そのようなことは聞いていない」ということを得々と主張し,病気を治癒させることよりも説明を優先させる患者さえ出現する.それに加えて,医療問題を担当する弁護士も多くなり,医療紛争が多くなっている.
わたしも立場上,医療紛争の鑑定人としてこれまで25件以上の鑑定を行い,鑑定書を提出してきた.人間の罪に影響する大事なことと考えて原稿用紙20枚以上にまとめることにしているので,論文1編以上にも値する時間と労力を費やす.これらの事件のなかには,なるほどお粗末な医療行為で訴訟となって当然のような内容のものも多い.しかし,なかには立派な医療内容でありながら,言葉足らずや意志の疎通を欠くために誤解され,訴訟に持ち込まれたと思われる件数も少なくない.いわゆるインフォームド・コンセントの得られていない例である.非常に残念でならない.
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