特集 不安定腰椎(第18回日本脊椎外科研究会より)
座長総括
「Ⅳ.自然経過と保存療法」
小野 啓郎
1
Keiro Ono
1
1大阪大学医学部整形外科学教室
pp.359-360
発行日 1990年4月25日
Published Date 1990/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408900064
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腰椎の「安定性」あるいは,「正常の支持性」を定義することははなはだ困難である.複合組織の連結構造からなる対象で,たえず,三次元的に動いているものをとらえて「安定している」と言おうとしても,所詮無謀かもしれない.「不安定性」を「一定限度の応力下において正常でない挙動をする腰椎」と言ってみても似たものであろう.しかし不安定性腰椎は厳然としてわれわれの目の前にあり,患者さんを苦しめることはなはだしいものがある.
松永(鹿児島大学)と佐藤(福島県立医大)が自然経過の中で不安定腰椎の特徴をとらえようとした.松永は平均8.2年の経過を追えた40症例の変性辷りについて,30%を占める進行例と非進行例を比べて以下の事実を明らかにした.進行を助長する要因として肉体労働があり,当該椎間には著しい狭小化や骨棘形成のないこと,初診時の辷りの程度も20%以下と低い例が圧倒的であったとしている.つまり,辷りの進行に対する抑止機構の働きがない例に増悪がみられるのではないかということである.なお,臨床症状は辷り進行例でも必ずしも悪化を示さないという.
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