境界領域/知っておきたい
COPDと骨粗鬆症
塚本 学
1
,
鍋島 貴行
1
,
荒川 大亮
1
,
真野 洋佑
1
,
岡田 祥明
2
,
沖本 信和
3
,
酒井 昭典
1
Manabu TSUKAMOTO
1
,
Takayuki NABESHIMA
1
,
Daisuke ARAKAWA
1
,
Yosuke MANO
1
,
Yasuaki OKADA
2
,
Nobukazu OKIMOTO
3
,
Akinori SAKAI
1
1産業医科大学整形外科学教室
2産業医科大学外傷再建センター
3沖本クリニック
pp.1044-1047
発行日 2024年8月25日
Published Date 2024/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408203083
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はじめに
2018年,全国たばこ喫煙者率調査によると,成人男性の平均喫煙率は27.8%である.喫煙率が低下傾向にある60歳以上では21.3%だが,30〜50代では依然として35%前後を推移しており,最も喫煙率の高い40代では35.5%である.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,喫煙を主因とする中高年に発症する生活習慣病であり,喫煙者の15〜20%がCOPDを発症するとされ1),日本では40歳以上の人口の8.6%,約530万人がCOPDであると推定されている.COPD患者の肺組織像は主に肺胞隔壁の消失を伴う肺気腫である.COPDは骨粗鬆症の危険因子であり,COPD患者では骨粗鬆症の有病率や椎体骨折の発生率が高い2-4).肺気腫病変の占拠率は,胸椎の骨密度(bone mineral density:BMD)と負の相関があり5),COPD重症度もまた各部位のBMDと関連がある6).一方,COPDと骨折に関する疫学調査では,COPD患者におけるBMDに依存しない骨折リスクの上昇が指摘されており,骨質の劣化も示唆されている.モデル動物やヒトの骨生検での検証は遅れており,本質的な病態については解明されておらず,「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」では,基礎研究による機序解明が必要であると言及されている7).本稿では,COPDが骨に及ぼす影響について,当教室で得られた知見も含め文献的に考察する.
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