最新基礎科学/知っておきたい
CDK8阻害薬と骨代謝
檜井 栄一
1,2,3
Eiichi HINOI
1,2,3
1岐阜薬科大学薬学部薬理学研究室
2岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科
3岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)
pp.1040-1043
発行日 2024年8月25日
Published Date 2024/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408203082
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はじめに
骨組織では骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が絶えず繰り返される「骨リモデリング」が営まれており,骨の形態や機能など骨恒常性が維持されている1).加齢・老化や閉経などにより両細胞のバランスが崩れ,骨吸収が骨形成を上回ると骨粗鬆症が生じる2).超高齢社会を迎えた本邦では,骨粗鬆症の推定患者数が1300万人と人口の1割を超え,ロコモティブシンドロームなどの運動器障害や骨折のリスクを上昇させることから,より有効な予防・治療法の確立が求められている.
骨髄内の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)は,骨芽細胞や脂肪細胞などへと分化する能力を持つ幹細胞の一種であり,加齢や閉経によりMSCの骨芽細胞分化による骨形成能が減弱することが指摘されている3,4).また,MSCが破骨細胞の機能を制御することで,骨恒常性の維持に関与することも報告されているが,いずれも詳細な機序は明らかになっていない.
サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase:CDK)はセリン/スレオニンキナーゼの一種であり,細胞周期や転写調節を含めて,細胞内で多様な機能を担っている5).CDK8は転写関連CDKに属し,近年がん幹細胞などの幹細胞性の制御に関与していることが報告されている6).CDK8阻害薬が骨芽細胞や破骨細胞の機能を調節することが示されているが,MSCに発現するCDK8の骨恒常性に及ぼす役割とその基盤となるメカニズムは不明である7).
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