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脊椎外科を専門としている私も,若い頃には先輩医師に“レーゲルどおりにするように”と指導され,何の疑いもなくいわれるとおりに診療を行っていた.たとえば,椎間板ヘルニアに対するLove法術後に2週間のベッド上安静を行うなど,今から思えばどのような根拠があってそのようなことを行っていたのか,不思議でもある.脊椎外科領域にはこのように根拠が曖昧な常識が数多くある(あるいはかつてあった)が,そこに鋭く切り込んで行ったのが星地亜都司先生による“Critical Thinking脊椎外科”である.
私事で恐縮だが,著者の星地先生は私の高校の2年先輩であり,当時から人に厳しく,自分にはもっと厳しい方であり,求道者然とした方であった.そのような星地先生が執筆された本書の初版は脊椎外科の本質を鋭く捉えており,私も含めて数多くの読者が目から鱗の感銘を受けたが,このたび13年の年月を経て待望の第2版が出版された.本書では,脊椎脊髄の解剖学,病態学,診断学に始まり,一般的な疾患から稀少なものまで,さまざまな脊椎疾患に対する手術の実際のこつ,合併症への対処,さらには英文投稿や統計学の重要性など,脊椎外科領域のあらゆる項目が網羅されている.脊椎外科における星地先生ご自身の豊富な経験とともに失敗談も包み隠さず披露されており,通常ならやり過ごされる事象についても深い洞察でその原因と解決策を見いだそうとされており,文章は哲学的ですらある.さらに,13年の間に新たに臨床の場に導入された手術手技や,椎弓形成術の項目に代表されるように星地先生ご自身が加えられた工夫などについてもご加筆され,内容も非常にup-to-dateなものになっている.
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