視座
老年医学で思うこと
大鳥 精司
1
Seiji OHTORI
1
1千葉大学大学院医学研究院整形外科学
pp.929
発行日 2017年10月25日
Published Date 2017/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200921
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最近,老年医学という言葉をよく耳にする.特に平均寿命と健康寿命の差が男女ともに10年以上あり,いかにそのギャップを短縮させるかが国からの宿題となっている.その1つとして,整形外科的にはロコモティブシンドローム,内科的にはサルコペニア,フレイルの啓発がその最たるものである.先日参加した内科中心の日本老年医学会では,ほとんどの演題が,サルコペニア,フレイルで占められていたのには大変驚いたとともに,それぞれの学会の思惑は別としても,これらの領域への関心が高いことが覗える.
整形外科において,骨・軟骨研究は以前から行われていたが,高齢者の筋に関した研究はあまり進んでこなかった.従来から,骨粗鬆症,筋減少は一見独立した疾患と考えられてきたが,最近になり,さまざまな疫学研究から両者の相似が報告されてきた.フィンランドの報告によると,筋減少を伴う女性はそうではない女性と比べて骨粗鬆症が13倍高く,握力(筋力)の低下群では骨粗鬆症が12倍多いとされた.また筋減少を伴う女性は,そうでない女性と比べて骨折が3倍多く,転倒が2倍多いとされる.この理由として,骨粗鬆症に関連するビタミンD受容体は筋にも存在し,欠乏するとtype II筋線維の萎縮をもたらし,ビタミンDの低下は,直接的に筋量低下をもたらすと報告された.
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