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はじめに
脊椎骨増殖性病変を有する代表的疾患にびまん性特発性骨増殖症(DISH)がある.DISHでは,主に脊椎の靱帯に異所性骨化が生じるが1-4),骨化進展により強直が進行すると,椎体内部には応力遮蔽性骨粗鬆症が併発する5).本邦における大規模横断研究によるとDISHの有病率は全体の10%と高く,とくに80歳以上の男性では40%もの患者が罹患する6).DISHの骨折リスクは,非DISH患者と比較して高いが5,7,8),DISH患者の骨粗鬆症に対する薬物治療に関しては知見がほとんどない.
骨粗鬆症性椎体骨折の予防効果が最も高い薬剤の1つに,副甲状腺ホルモン(PTH)製剤テリパラチド(TPD)がある.TPDはPTHの活性部位であるN端側34個のアミノ酸を遺伝子組換え大腸菌あるいは化学合成で作製したタンパク製剤である.PTHは本来血中カルシウムの主要な調節因子であり,骨基質に貯蔵されているカルシウムを動員する作用をもつため,副甲状腺機能亢進症による持続的なPTH高値では骨量は減少し,二次性骨粗鬆症を来す.しかし,1980年にReeveら9)が,PTHを間歇的に(毎日1回)投与すると,骨吸収の亢進に比べ骨形成が優位に上昇し,骨同化作用を示すことを報告した.以降,骨形成促進作用をもつ骨粗鬆症治療薬としての開発が進み,本邦では2010年から臨床使用が承認されている.
TPD間歇的投与は,とくに海綿骨を多く含む椎体に強く作用する.海綿骨の増加だけでなく,骨梁構造も改善するため10),閉経後骨粗鬆症患者の椎体骨折リスクを著明に低下させる11,12).すなわち,TPDはDISHにおける椎体海綿骨骨粗鬆症に対しても有効と考えられる.しかしながら一方で,強力な骨形成促進作用により異所性骨化や脊椎強直などの骨増殖性病変をさらに増強させる懸念がある.
そこで,われわれはDISHにおける応力遮蔽性骨粗鬆症および骨増殖性病変に対するTPDの効果を,マウスモデルを用いて調査した.
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