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2013年に米国の研究チームが,12万年前のネアンデルタール人の肋骨にある線維性骨異形成をマイクロCTスキャナーで見つけ出した.これまでの記録を約10万年更新したことになる.現在の人類の祖先であるホモサピエンスが世界中に拡がる以前から,骨や軟部の腫瘍が存在していたことが想像される.しかし,われわれが記憶にとどめなければならない業績は,1891年に腫瘍外科医であったWB Coley(1862〜1936)がNew York Academy of Medicineで講演した“Contribution to the knowledge of sarcoma”を嚆矢とする一連の研究である.16歳女性の大腿骨遠位部に発生したround celled sarcoma(おそらく骨肉腫)に培養した連鎖球菌を局所投与したところ,腫瘍が著しく縮小したことを確認した.若い女性の第2胸椎の骨肉腫においても同様の結果を報告し,悪性腫瘍の免疫療法のきっかけとなった.現在ではこの現象がTNFαによることが明確にされている.後にCancer Research Institute(USA)はColeyの業績を称えた賞を創設し,優れた免疫研究で業績を挙げた研究者を表彰している.この受賞者はその後ノーベル賞を多数受賞している.
EA Codman(1869〜1940)は,骨軟部腫瘍での業績はもとより,それ以外でも多くの成果をなした人である.麻酔医,放射線医,消化器外科医,腫瘍整形外科医に加えて,肩関節外科医など実に多彩な才能を発揮した.肩関節ではCodman体操の名が知られているが,骨腫瘍では,骨肉腫のX線診断でCodman triangleを知らない者はいない.軟骨芽細胞腫を最初に報告したのも彼である.病院全体で患者をフォローすることが病院の質を保証することになると最初に提案し,多くの医師の反発に合いながらも,患者登録が治療結果を知る手立てとなり,医療の質の向上に大きく繋がることを訴え続けた.そして1925年に米国で初めて骨腫瘍登録制度を作り上げ,他のどの癌腫よりも早くスタートした1).
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