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はじめに
関節リウマチ(RA)の治療において,外科的治療は当然,薬物治療による疾患活動性のコントロールと大きく連動する.また,RAの関節病変は慢性炎症に伴う高度の関節破壊であり,患者の主訴が疼痛,不安定性,機能障害,美容的外観など多岐にわたるため,個々の関節において適応とタイミングを決めることは大変難しい.最近の生物学的(Bio)製剤の登場による炎症のコントロールによって,外科的治療の位置付けは徐々に変化しつつあり,その価値はなお存続している.RAの外科的治療の歴史的背景から先人の苦労とその時々の価値を振り返りながら,今後の外科的治療の対応のありかたを考えてみた.
RAの薬物療法としてアスピリンをはじめとする消炎鎮痛薬が用いられ始めたのは19世紀末からである.以後多くの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が開発されたが,いずれも疼痛を軽減する対症療法であり,RAの治療薬にはなりえなかった.1930年代に金製剤が有効とする報告がなされて多くの臨床試験が行われたが,これも副作用が多く,また薬効も低かったため下火になった.続いて1940年代に副腎皮質ステロイド剤がRA治療に用いられたが副作用が多く,現在では基本的にRA早期に期間を限って用いることが推奨されており,疾患の根本的な治療薬とはならないこともわかっている.RAの病態解明が進むにつれ,その病態に直接薬効を示す製剤としてD-ペニシラミン,メトトレキサート(MTX)など疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が次々と開発・使用されてきた.2000年代に入ってから生物学的製剤の有効性が高く評価され,特にMTXとの併用による優れたRAの疾患活動性コントロールが可能となり,早期例の一部においては寛解もみられるようになった.こうした薬物治療の発展を背景に,外科的治療も大きく変遷してきた13).
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