連載 特別寄稿 整形外科の歴史
幻の慶應義塾大学整形外科初代教授 桂秀三
三笠 元彦
1,2
1松戸整形外科病院
2新横浜整形外科リウマチ科クリニック
pp.155-158
発行日 2014年2月25日
Published Date 2014/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408102967
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1.「近世整形外科学」
本邦で最初の整形外科の教科書は松岡道治著「人體畸形矯正学」(1910年)であるが,「整形外科」の名を冠した最初の教科書は桂 秀三著「近世整形外科学」(1927年,金原商店)で,桂 秀三37歳の上梓である.筆者は1昨年の暮に全くの幸運でこの「近世整形外科学」(図1)をネットで手に入れることができた.早速,日本医史学の泰斗蒲原 宏先生に電話で報告したところ,先生も50年前に山形市の古本屋で手に入れたそうで,「個人が所有しているのは,この2冊だけですので,大切にしてください」と言われた.全379ページで,『神中整形外科』の13年前の著作である.外傷は入っていないが,側弯症,カリエス,先天股脱,クル病など当時の整形外科疾患を網羅しており,大正・昭和初期にこれだけの内容を書いた桂 秀三とはどのような人物であったかに興味を抱き,ネットで検索したが,桂 秀三のプロフィルは全く載っていない.実は蒲原先生も同様なことを感じ,資料を集められたそうである.その貴重な資料を提供していただき,桂 秀三の生涯を調べることとなった.東京大学整形外科学教室100年史を編纂された高取吉雄先生にも協力いただき,慶大医学部人事課の資料も参考にした.
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