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はじめに
頚椎症(CSM)や頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)による圧迫性頚髄症に対する後方除圧術として,この半世紀の間に「椎弓切除術」から,椎弓をできるだけ温存したさまざまな「椎弓形成術」への変遷がみられた.「椎弓形成術」は,広範囲椎弓切除した後の頚椎後弯変形を防ぐために,後方の骨性要素をできるだけ温存し再建すべきと考えられ開発されてきた術式である.しかし最近は,骨性要素の温存よりもむしろダイナミックにアライメントを維持する靱帯や筋肉要素の温存と,速やかな項筋機能回復が最も重要であることが学会で主張されるようになった.また術後に神経症状は回復しても,かえって高頻度で発生してきた頑固な項部痛が,変性した項筋由来であることも理解されるようになり,従来の棘突起の両側を一気に剝離し,長時間レトラクターにより圧排されることによる筋肉組織の阻血性のダメージを防ぐ必要性も,はっきりと主張されるようになった.そして最小侵襲手術法(MIS)の概念や内視鏡の使用により,除圧も「領域除圧」ではなく「ピンポイント除圧」が言われ,軟部組織や後方要素の極端な温存手術がもてはやされるようになっている.
現在行われている各種の頚椎椎弓形成術に関しては,病院や大学それぞれに上記の理念を理解しつつ独自の術式の変遷を経ているために,それぞれに言及することは不適当である.また個々の脊椎外科医は自分の行っている椎弓形成術が独自の治療理論と経験に裏付けられ,患者の負担も少なく,成績も優れているという自負を持っておられるはずであり,それらの甲乙を論述する立場にもない.
そこで,ここでは筆者が京都大学における研修医時代から経験した順に,①桐田式観音開き椎弓切除術(以下,桐田法),②桐田-宮崎式観音開き椎弓形成術(以下,桐田-宮崎法),③近畿大学式観音開き椎弓形成術(以下,近大法),④筆者が近畿大学着任後に導入した項靱帯温存椎弓形成術(以下,浜西アプローチ)に至る,1つの流れとしての術式変遷を述べるにとどめたいと思う.
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