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国会では平成23年度予算案審議が始まった.本号が発刊する頃には一応決着しているものと思われるが,予算関連法案の成立は不透明である.国は税収より大きな国債を発行して戦後最大規模の予算案により景気回復を図ろうとしている.しかし,来年度末には国の負債総額が何と997兆円まで膨らむと予想されている.これは国民一人当たり783万円の借金に相当する.そのほとんどは国債であろうが,日本の長期国債格付けがAAからAAマイナスへと1ランク格下げされた.タンス預金を含め貯蓄大国である日本の総資産は1200兆円程度?と言われているが,間もなく借金が上回る時期がやって来る.今は国債の95%を国内で保有しているが,これが買え支えられなくなった時こそ「財政破綻―日本経済の終焉」である.イギリスでも国民の反対は強いが政治主導で本格的財政再建に取り組み始めている.国のGDPも中国に抜かれ世界第3位へ,そして一人当たりのGDPも2000年時3位から2008年には23位へと急下降している.国際競争力も1990年時1位から2010年には27位に,そして電化製品も液晶パネル世界シェア1995年時100%が2005年には10%まで下落している.こんな状況下にある日本の今後は…,簡単に消費税率引き上げだけでは済まないだろう.この景気低迷,財政難に加えて,人口動態では世界に類を見ない超高齢,少子高齢化が進んでいる.現在の高齢者比率は23%を超え,75歳以上も11.3%と東京都の人口と同じである.2050年にはそれぞれ40%,27%という数値が示されている.これにより,高齢者一人を支える働き手は現在の3人から1.2人と,マンツーマンで支える時代を迎えるのである.そして,今世紀末にも日本の総人口は半減するそうである.何とも辛い数値である.その上,鳥インフルエンザや口蹄疫問題,霧島新燃岳の爆発的噴火,昨夏の猛暑とそれから予想される大規模スギ花粉発生や今冬の大雪などの環境問題,加えて核やテロの脅威と北朝鮮・中国などとの国際問題,…等々,国民が内向き思考になるのも無理はない.
医療に目を向けても,世界に誇れる国民皆保険制度や年金制度も財政面で大きな危機を迎えている.高齢者医療をどうするのか,そして医師不足,地域医療・救急医療の崩壊,厚労省からは看護師も5万6千人不足と報じられている.日本の総医療費は現在約35兆円弱,これに介護保険が8兆円弱とされている.消費税率1%の引き上げで2~2.5兆円の増収が見込まれるが,すべて医療費だけに投入することもできない.さて,本当にどうする! 長寿国日本の医療を….
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