書評
『超音波でわかる運動器疾患―診断のテクニック』―皆川洋至●著
史野 根生
1
1大阪府立大学大学院・総合リハビリテーション学部
pp.1157
発行日 2010年12月25日
Published Date 2010/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101865
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小生がスポーツ整形外科を志して,30余年の歳月が流れた.その間の画像診断上最大の衝撃はMRIであった.1980年代の中頃,米国の学会で観たMRI画像は驚きであった.関節切開や関節鏡を施行しなければ分からなかった十字靱帯や半月などの膝関節構成体が鮮明に描出されていた.現在でも,MRIが筋骨格組織深部を描写する最良の画像診断装置と断言できる.しからば,MRIですべて事足りるのか.答えは否である.大規模な装置とかなりの時間の被検者静止が必要であり,機動性がなく,リアルタイムの動態観察は不可能である.
超音波画像診断は,リアルタイムの生体内組織観察が可能で,無侵襲であり,容易に反対側正常画像が得られるので,病的画像の解釈が容易である.以前より,スポーツ整形外科分野においても肩腱板損傷など浅層部位診断に用いられてきた.しかしながら,画像が不鮮明で,具体的表現力に乏しかった.想像力不足の小生などは,全く理解できず,興味をなくしてしまっていた.ところが,2008年に,とあるスポーツ医学の学会の展示ブースで某社の超音波診断装置の作り出した画像に目が釘付けになった.それまでの漠然とした超音波画像と全く違い,鮮明な画像が呈示されていた.センサーの精度向上とコンピューターの演算技術の進歩・普及を考慮すれば,当然の成果と説明を伺った.問題なく診断に使用できるレベルに達していた.その場で,著者の皆川先生とも初めてお会いし,先生の超音波画像診断に対する造詣の深さに感心した.その先生が運動器疾患のための超音波画像診断の本を出版された.
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