視座
日本の臨床研究――今昔と将来
佐藤 裕史
1
1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター
pp.239-240
発行日 2009年3月25日
Published Date 2009/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101467
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一流国際誌の掲載論文数では基礎研究で世界4位と健闘する日本が,臨床研究では14位に急落してしまう2).欧米勢は「日本の臨床医は着眼点は良いが,それを臨床研究で検証するのが不得手」と心得ており,日本の発想を密輸しさっと臨床試験を仕上げ知らぬ顔で一流誌に出す,とはある脳外科医の直話である.日本の貴重な臨床的英知が横取りされるのは国辱ものであろう.そのくせ,欧米の診療指針追従がevidence-based medicine(EBM)に大事だとされる.もっともEBMの原義は,臨床経験を踏まえて実証的根拠の可否を吟味し個別の臨床判断を下すことであり4),日本で横行する「EBM=ガイドライン遵守」という曲解は,医療費削減を狙う下心によるものらしい3).
他方,海外の教科書にも載る重要な薬が一向に日本で使えない状況もあり,これが抗癌剤だと生命予後に直結するのでやっと問題視され出した.世界同時に治験を行い承認を得る国際共同治験が主流になる中,日本の国際共同治験参加件数は世界60位前後で,パキスタンやインドネシア並みである.
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