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「胸椎後縦靱帯骨化症の治療」のシンポジウムが第36回日本脊椎脊髄病学会学術集会(2007年,金沢市)で採択され,除圧や脊髄の生体力学および血行状態,画像診断の読み方からみた術式の吟味,さらに後弯矯正とinstrumentationの方法について,当該病態の治療のfront lineで活躍する施設・術者から,従来にはない「一層踏み込んだ」発表と討議が行われた.この病態に関しては日本整形外科学会や他の会期の日本脊椎脊髄病学会,中部日本整形外科災害外科学会などでも何度かパネル討議などが行われたが,今回はシンポジウム参加者も350名を超し,演者も最前線の外科医であったので,一層の白熱したシンポジウムであった.Moderatorは中村耕三教授(東京大学・厚生労働省「脊柱靱帯骨化症研究班」主任研究者)と馬場が務めた.なおこの極めて難治的な病態に関して,「脊柱靱帯骨化症研究班」では多施設共同研究が平成17年度から行われており,多数例のcritical reviewが松本守雄研究主査(慶應義塾大学)を中心に鋭意行われている.
「胸椎部 後縦靱帯骨化症(OPLL myelopathy)」は言うまでもなく脊椎外科学分野では最も治療が困難な病態である.1970年代までは主として椎弓切除術が一般的であったが,1980年代に入り慶應義塾大学グループなどによって「前方除圧固定」の成績発表が行われだした.手術顕微鏡やsurgical airtomeの導入,脊髄モニタリングの併用によって手術成績も向上した.1980年代に入り「後方進入前方除圧術」(大塚訓喜 信州大学元助教授)が報告される一方,黄色靱帯骨化(OLF)合併例(OPLL・OLF合併例)という脊髄の菲薄度が極限に達した状態に対する直視下の「脊髄全周除圧術circumspinal decompression」が,富田勝郎助教授(現,金沢大学医学部附属病院長)によって初めて第16回日本脊椎外科研究会(1987年,東京)で報告され,1990年前後はそれらの2つの術式が斯界の大きな注目を集め,また多くの追試もなされた.筆者も数多くの富田勝郎教授の「脊髄全周除圧手術」の助手を務めさせていただき,その手技は教授の英文論文(Spine 15, 1990)に詳しく,その延長上に後述するdekyphosis stabilization(Kawahara N, et al. Spine 33, 2008)が生き続いている.
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