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新しい年を迎え,世の中では暗い話題が多かった2007年のニュースと新年への希望が取り上げられている.屈託無く笑えるお笑い番組の鑑賞は私の趣味の1つであるが,昨年のM-1グランプリという若手芸人の漫才大会で,「サンドウィッチマン」というコンビが優勝したことをご存知の読者の方もおられると思う.世間の風評や記憶というものも,極めて曖昧でほとんどの事象は時間の経過とともに忘れ去られる.サンドイッチマンという,街角で看板を体の前後につけてサンドイッチを思わせる風貌で宣伝活動をする仕事は,われわれの世代では常識であったが,ほとんどの若い整形外科医はその単語を知らないか,漫才コンビの名前としてしか認識していない.アメリカで始まったのではないかと思われる仕事で,英語の辞書にも載っているこの言葉も,世の中から忘れ去られつつあるということである.
同じように,整形外科の先人が積み上げてきた業績も時代の流れとともに風化してゆく.学問での多くの新しい発見は先人たちの業績の上に積み重ねられていくものであり,お笑いとは本質が違うので不埒なことを考える私がおかしいと思うのでお許しいただきたいが,遠い未来に渡り伝えられていく業績がどのぐらいあるのかと考えることがある.本号では「整形外科手術におけるナビゲーション支援」が誌上シンポジウムとして取り上げられている.IT革命は明らかに新しい世界をもたらしており,携帯電話の普及などはその良い例であって,本誌から整形外科領域での最新の情報が読み取れる.コンピュータによるナビゲーション支援手術は,時代の先端を走る話題であり,今後の整形外科の常識を覆す可能性が十分にある.さらなる技術の進歩と,より一般的な使用が可能になる革新的な飛躍を期待したいものである.一方では,昔は常識であった,手書きでデータを書き込んだCBスライドでの学会発表や,多くの手術術式は記憶から消えていく.揚子江のような大河は,遠くから見ると全く流れがないように見えるが,近寄るとその流れの激しさに驚くという.学問の流れも同じで,その中に身を置くと,すさまじい流れに多くの事項が淘汰されていく.サンドイッチマンがネットのコマーシャルに置き換えられていったように,従来の手術がナビゲーション支援手術などの新しい形の革新につながる可能性もあり,今後の発展を心から期待したい.
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