最新基礎科学/知っておきたい
Autocrine motility factor(AMF)と癌転移
渡辺 秀臣
1
,
柳川 天志
2
1群馬大学医学部保健学科総合理学療法学
2群馬大学大学院医学系研究科機能運動外科学
pp.1088-1090
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100960
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■Autocrine motility factor(AMF)
Autocrine motility factor(AMF)は,1986年にヒト黒色腫細胞の培養液中から,分泌細胞のchemotaxis運動を刺激する活性としてLiottaら3)により報告された.AMFはSDS-PAGE(SDSアクリルアミドゲル電気泳動)上で,55kDaの大きさが,還元状態では64kDaと大きくなるのが特徴である.1996年,われわれはマウスの転移性線維肉腫細胞の無蛋白培養株を用いて,その培養上清からAMFを精製してアミノ酸配列の一部を明らかにすることに成功し,1986年に遺伝子の解明されたneuroleukin(NLK)の28個のアミノ酸配列に一致することを明らかにした8).NLKはニューロンの生存を促進するneurotrophic factorとして働き,神経細胞の膜運動の1つであるterminal axonal sproutingを誘導する事実は運動因子活性と考えると興味深い.一方,1988年に細胞内の糖代謝の重要な酵素であるphosphohexose isomerase(PHI)がNLKと遺伝子配列上同一分子種であることが報告された.PHIは解糖系の中でglucose-6-phosphateをfructose-6-phosphateに変換するのを触媒する酵素で,glucose-6-phosphate isomerase(GPI)とも呼ばれる.われわれの分離,精製したAMFもPHI/GPI活性を有していた8).
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