視座
スポーツ選手の手術
岡 義範
1
Yoshinori OKA
1
1八王子病院整形外科
pp.113-115
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100037
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昨年夏のアテネオリンピックで,日本人選手が例になく多くのメダルを獲得したことは興奮と感動の記憶としてなお真新しい.金メダルを中心にどうしてかくも大量のメダルを獲得し,急に立派な成績を残し得たのか,部外者の私には理解できないものがある.
能力のある選手がたまたま多く存在したためかもしれないが,それだけで世界の頂点を極めることができるはずはない.水泳の水着,マラソンの靴にみられるように,経済大国・技術立国である現在の日本の高度のテクノロジーを利用した,種々の競技器具やトレーニング法の開発などの科学力で,個々の選手の才能を100%以上引き出すような,科学技術による支援が大きく影響していることは十分考えられる.しかし,それだけでかくも立派な成績が残せるはずはない.個々の競技の技術の向上と精神面の強化が最も大事であり,幼小児期からの選手の育成と技術指導,精神面のイメージトレーニングなどが,従来からの「がむしゃらな練習」「気合い」中心の育成法に取って代わってきたことが大きな要因であろうと思われる.私の所属する大学の柔道部は,周知のごとく世界に冠たる選手を多く輩出しているが,その指導者と話す機会が多々ある.大学に入学してきた選手自体が既に高校までに立派な成績を得てきた選手を獲得していることもあり,彼らに「気合い入れ」を行う指導はとっくの昔から行っておらず,個々の選手の自主的な練習法を尊重し,個々に応じた技術指導・精神面強化に重点を置いているということを聞かされた.もっともなことと感嘆したのは既にかなり前のことである.
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